
Challenge
ブリティッシュエアウェイズ100周年記念事業の一環として、100年後の空の旅をスペキュラティブデザインを活用しデザイン。
英国航空 2119年 Flight of the Future 展では、未来の社会が直面する環境問題を解決するアイディア、未来のユーザー体験をスペキュラティブデザインを活用し表現。最先端ジェット推進、ハイパーパーソナライゼーション、オートメーション、AI、モジュール式輸送、サステイナビリティ、パーソナルヘルス、未来の機内エンターテイメントを各展示作品を通じて社会に問題提起していきます。
Interviewed by | メディア取材
Outcome | 実績
- ユーザーエクスペリエンス部門 最優秀賞
- フォーブス、BBC、SkyNews他 多数メディアにて特集
- ロンドンで最も有名な美術館の一つSaatchiGalleryにて1ヶ月常設展示
Main Contribution
- UX Design: フューチャーペルソナ | エクスペリエンスマッピング | フューチャーサービスブループリント
- Visual Design: ヴィジュアルアイデンティー | 展示グラフィックデザイン | 資料制作
- Video: コンセプトストーリーデザイン | クリエイティブダイレクション | 編集
Tools and methods
Research デスクリサーチ| フューチャトレンド分析 | ユーザーインタビュー | ステークホルダーインタビュー
Define フューチャーペルソナ / エクスペリエンスマッピング
Design 食品プロトタイプ |フューチャーシナリオデザイン | 展示デザイン | 3D モデリング
How it works


Research
Predicting the future of 2119 and understanding the current experience
プロジェクトは現在抱えている問題や、社会変化をシグナルとして利用し、将来的に何が起こりうるのか、何が望ましいのか、何が起こりにくいのか、という未来予測から取り組み始めました。
コンタルティングファームと一緒にワークショップを開催し、未来に起こり得る/起こり得ないシナリオを3~5年から100年タイムスパンでの未来を考えていきました。
将来のシナリオの先にあるものを可能な限り深く、明確に考えるために、未来トレンド分析コンサルタント会社のフォーサイト社の協力の元ワークショップを実施しました。ワークショップではタイムスパンを3~5年、20年、50年、100年の4つのタイムフレームに分け未来のシグナルを探っていきました。
今回のプロジェクトでは、NASAやモビリティデザイナー、未来学者などの専門家を招きそれぞれの知識を共有してもらうことで、デザイナーとは違う視点の物事を理解することもでき、より幅広いインスピレーションを吸収しながらプロジェクトを進めていきました。
ワークショップと専門家によるレクチャーセッション後、ブリティッシュ・エアウェイズ本社と工場を訪問し、組織の中でセキュリティ、オペレーション、ビジネスがどのように運営されているのかを観察し、現状把握しました。ブリティッシュ・エアウェイズの本社や工場を訪問し、現在の組織内での各ステージの運営状況を理解し、規制や技術的な制約から改善すべき点や挑戦すべき点を理解しました。
規制の中でどのように経営が行われているのか、また、革新的なアイデアを考える上での課題を観察を通じて理解。また、経営母体が膨大なため、システム全体のイノベーションは追わず、より具体的なタッチポイントに焦点を当てる必要をチーム内で共有しました。

Understanding the current flight experiences
- ユーザーは現状のフライト体験に満足しておらず、睡眠をとったり、音楽を聴いたりと、自分なりの方法を使って時間をつぶしている。
- 航空業界では厳しい安全規制のため、食に対する安全基準が非常に高く、食品廃棄物が大きな問題となっている。
- 食品廃棄物や大気汚染などの世界的な問題は、今後ますます深刻な問題になっていく。
未来シナリオワークショップ、専門家による講義、BA本社訪問後、私たちは得た知識を元にデスクリサーチと現在のユーザーが抱える問題をユーザーリサーチから紐解いていきました。
ヒースロー空港でのユーザーインタビューでは、多くのユーザーが現在のフライト体験に満足しておらず、睡眠や音楽鑑賞など自分なりの時間つぶしの方法を模索しているという、ユニークなインサイトを発見。この傾向は年齢層に関係なく、若年層のユーザーは、フライトは単なる移動手段の一部であると認識している傾向が強く、質の高いサービスを期待していない傾向があります。また、興味深いことに、フライトを乗り切るため軽食や小さな食べ物を持参している方も多く、機内食に対する不満も多く見受けられました。
その上で私たちチームは航空産業における食品の扱いがどうなっているかにフォーカスしリサーチを続けていきました。その上で航空産業によるフード文化が環境にどのような影響を与えているのかについてリサーチ。航空産業では衛生面での規制が非常に強く、フライト後に大量の食品廃棄物が発生しているというプロブレムを発見。またタイトなスケジュールと業務上の理由から、すべての乗客(ビジネスクラスとファーストクラスを除く)に美味しい食事を提供することができないということプロブレムも発見した。
このことから、私たちはエンドユーザー体験の向上だけではなく、食品廃棄物や大気汚染などの問題は深刻な問題であり、早急に解決しなければならないことプロブレムだとチーム内で共有。またユーザーインタビューでも数人のユーザーはすでに問題意識を持っていました。私たちのチームは、リサーチとインタビューの結果をベースに航空業界の食品問題をプロブレムエリアとして取り組むことにしました。


Define
- 人がより簡単に移動できるようになっても、時差や文化的ギャップの問題は残るので、身体的感情面におけるヘルスケアに焦点を当てる。
- 機内食そのもののエンターテイメント性を高めつつ、文化的ギャップや身体的な調整のための「メディア」として「食」を活用する。
- 将来のメインユーザー層を想定したペルソナメイキング
食文化を考えるにあたり、100年先テクノロジーの発達により移動時間や頻度が変わっても根本的な部分は変わらないという仮説のもと、天候や時間帯、文化などが異なる旅先でいかにコンディションを整えるかという「Well-Being」をテーマに設定。そして、リサーチ結果でスコープした「食体験」も踏まえ「ウェルビーイング」と「食体験」の向上を両立させることをビジョンとして設定しました。
また未来に焦点を当てるため、未来のユーザーがどのような人物であり、どのような体験をしているのかを明らかにするために、未来のペルソナをデザインしました。ペルソナを推測することで、未来のユーザーがユーザー体験だけでなく、サステイナブルにも気を配るべき点が見えてきました。
これは、現世代のライフスタイルから得たシグナルであり、現状においても環境を重視する声は大きくなっており、多くの人がサステナビリティが将来の生活に重要な要素であると認識していることから設定しました。またすでにサステイナブルな製品やサービスを選択する新しいユーザー層が現れており、このシグナルが消えることなく、世の中で当たり前になっていくと考え、私たちのスペキュラティブデザインではサステイナブルを中心にしたデザインにするべくステートメントを作成していきました。


Future User Data Collection Journey to customise personal food
ユーザー、テクノロジー、ビジネスの3方向でのステートメント設計
- DNA情報と直近の個人ヘルスデータを基に、ハイパーパーソナライズされた3Dプリントフードを作ることを可能にし、ユーザー体験を向上させること。
- ビジネス面では、航空業界では食品プロセスにおいて手作業での調理に頼っている。3Dプリントを用いることで、事前の調理が不要になり、ビジネスにおける経費を節約でき、更に事前調理プロセスを減らすことで食品の安全性も向上します。
- 私たちのアイディアは、世界規模で航空業界における食品廃棄物をゼロレベルまで減らし、更に不要な搬送機材を減らすことにより燃料効率を更に向上させます。結果として経費を節約しながら、環境を保護することを想定しています。
技術的な実現可能性、将来的にテクノロジーとともに人々がどのように生活していくのかをイメージする必要がありました。私たちがインスピレーションを得たシグナルの一つに「マイクロボディチップ」があります。
マイクロボディチップは、すでにいくつかの国で採用されており、より普遍的になっていくと考えこのチップを利用し、乗客が自分の個人情報をブリティッシュエアウェイズと共有することができるのではないかと想定しました。
個人データをどのタイミングでどのように共有するのかを明確にするため、BEFORE DURING AFTERとしてユーザーとデータのエクスペリンスマップをデザイン。これはパートナーであるブリティッシュ・エアウェイズにもバックエンドプロセスをイメージして目的で制作し、より明確に私たちの想定するストーリーを伝えることができました。

Design
初期プロトタイプではブリティッシュ・エアウェイズとゲスト講師を招き、実際のステークホルダーがどのような形や食感の食べ物に反応するかを試作品と共にプレゼンテーションを実施。その結果、参加者からも非常にポジティブな反応をもらい、現在も未来も関係なく、食は人の心と強く結びついていることを実感。
食というチームコンセプトをまとめた後、未来に起こりうる個人データについても議論し、プロトタイプに反映。100年後の未来社会でどのようにそしていつ個人データを収集していくのか、そして未来で人々がデータに対してどの程度許容しているのか、どのようなデータを企業を共有しているかも想定しながらプロトタイプをデザイン。
デザインステージでは、色々な食べ物を利用してプロトタイプを制作、食感、色、シェア、素材などを変えて、いくつかのテストをステークホルダーと行いました。食べることは人間の基本的な欲求であり、プロトタイプセッション中も非常にユニークなフィードバックをもらいました。3Dプリントの可能性やデータ収集にもステークホルダーから強い関心を持っていただき、テクノロジーの可能性についても専門家交えて議論をしてアイディアに対する裏付けを強化していきました。


Deliver
Exhibition at Saatchi Gallery London
また、多くの子供たちが私たちのディスプレイに興味津々で「これは何なんだろう」「これは何なんだろう」と大人が説明しているする姿も見られ、私たちのアイディアが未来の世代の航空産業に対する考え方に微力ながら影響を与えられたことを光栄に思います。
