Challenge

英国公共放送BBCはデジタル時代において国という概念を超え、国内のみならずグローバル企業との視聴者獲得をしなければならない課題に直面している。グローバル企業に比べ予算的に劣るBBCとして視聴者を惹きつけ、公共放送の使命を果たすことが課題として挙げられています。

特に現在の課題は、16歳から34歳までの若年層との繋がりを強化することを優先課題として挙げています。ここ数年、BBCにおける若年層ユーザー減少が際立っていること、BBCとして、このグループとのつながりが将来のサービスにとって不可欠であり、重要であることを認識している為です。

今回のプロジェクトはBBC公共サービスの使命を果たしつつ、若年ユーザーグループを惹きつける新しいサービスをデザインすること、BBC内でのサービス戦略に対し判断材料として活用するという目的でスタートしました。

Main Contribution

UX Design: モバイルサイト同線設計| ワイヤーフレーム | プロトタイプ

Visual Design| ビジュアルガイド| レポートデザイン

Tool and method

Discovery  デスクリサーチ | ユーザーインタビュー | ユーザーセグメント | ジャーニーマップ | ステークホルダーワークショップ | オンラインサーベイ

Define  SWOT分析 | インサイト分析 | ペルソナ | HMWステートメント

Define  デザインハッカソン | プロトタイプワークショップ | サービスブループリント |バリューチェーン

Delivery  バリューチェーン | サービスプロポジション

BBSee | How it works

  • フェイクニュース診断プラグイン
  • ニュースに対し多様な視点からユーザ同士で交流できるプラットフォーム

ユーザーがよりクリティカルに、より効率的にニュースを読むことを目的とした埋め込み型プラグインサービス。

アプリは主に3つの機能で構成しています。

  • ニュース信頼度の可視化
  • ユーザー自身のニュース消費行動チェック
  • 一般的なニュースだけでなくローカルニュースを市民同士で意見交流

BBCのValueである世界で最も信頼されているニュース機関としての強みを生かし、またBBCの「人々を教育する」のMissionを達成するため、フェイクニュース診断サポートをユーザーに提供。ユーザーに対しニュースソース先がはっきりしていないこと、他のニュースサイトで取り上げられておらず議論が行われていないこと等をアラートします。またBBCだけでなく、ユーザー自身がニュースへの信憑性を加えていくことで民主的にフェイクニュースの可能性をアラートします。

ニュース消費行動チェックは、ユーザー自身がどのようなコンテンツ、ニュースソース、コメントを読んでいるかを確認することができます。自分自身の意見がニュース行動によってどのように形成されているかをビジュアルを通じて理解することができます。また、自身のイデオロギースタンスが狭く偏っている場合には、より広い意見に触れるよう促しクリティカルに社会ニュースを考える機会をユーザーにアラートします。

もう一つの特徴は、ユーザーを受動的なニュース消費者から能動的なユーザーに変えることです。オンライン上では色々な話題で議論が行われるが、英国民主主義社会を支えるBBCがファシリテーターとして市民同士の意見交流を促します。一般的なニュースのみならずローカルニュースに対しロケーションエリア内にいる方たちと議論をしていくサポートをします。これにより、より社会での議論を活性化させることを目的としています。 

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Research

デスクリサーチ 現状ニュース消費行動

  • ソーシャルメディアが主なニュース接触先であり、好んで使用されている。
  • BBCの試聴接触率は下落傾向だが、BBCは世界で最も信頼されているニュース機関として認識されている。
  • フェイクニュースを見分ける手段としてニュース機関のブランドに依存している。

私たちのプロジェクトは、若年ユーザのニュース消費行動の現状把握、ニュース産業の現状、特にデジタルプラットフォームの現状を理解するためのデスクリサーチからスタートしました。

ニュース消費行動として、特にソーシャルメディアでのニュース摂取を好む若年ユーザの割合が高いことがわかりました。興味深い発見として、若年ユーザー層はテレビや新聞のようなマスメディアでニュースにアクセスしない傾向があるにもかかわらず、BBCに対する信頼度が他世代同様に非常に高いことがユニークな発見でした。

フェイクニュースは特にデジタルプラットフォーム上で問題になっており、ソーシャルメディア上であっという間に拡散されてしまうという点もユニークな問題として着目しました。さらにフェイクニュースは一定の信憑性があり、ユーザーが見破るのは容易ではないという点も問題点として発見しました。

このことからフェイクニュースによるニュースコンテンツへの信用度が落ちており、ユーザーはオンラインプラットフォームを活用する際に、逆説的に依然としてニュース機関の信頼性を頼りにしながらニュース購読をしているという仮説にたどり着きました。

デスクリサーチで得た発見、仮説を元にチームとして解決するプロブレムエリアをフェイクニュースと信頼性の向上の2点に決定しました。その後、これらの発見/仮説を元にユーザーリサーチをデザインしていきました。

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若年ユーザーのニュース消費習慣

  • BBCが持つ独立性/中立性に対し他メディアに比べ信頼している若年ユーザーが大半。
  • インタビューを実施したユーザーの大半が何かしらの方法で毎日ニュースをチェックしている

若年ユーザーのニュース消費習慣を把握するために、ユーザー40名にインタビュー実施。その結果、「いつでもどこでもニュースコンテンツが読める」「ニュースを日常的に読んでいる」「ニュースソースを自身で選択している」という3つのポイントが明らかになりました。

彼らはデジタルネイティブ世代であるため、自分のニーズやライフスタイルに合わせてニュースを選び、自分のタイムスケジュールに合わせニュースをチェックするというライフスタイルが前提ということがインタビュワーの回答の大半を占めていました。

また、若年ユーザーグループ内にもいくつか異なるユーザーカテゴリーがあることがわかったので、ユーザー別に傾向をまとめることを行いました。マトリックスを用いて、グループをマッピングすることで、どのグループが私たちの想定するメインのフォーカスグループとなるのかを定義しました。
 
私たちは主に若年層ユーザー内において2つのグループに焦点を当てました
  • 感情の起伏が少なめのヘビーユーザーグループ
  • ニュースコンテンツ背後の文脈に注意をあまり行わない受け身なユーザーグループ
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現状ニュース消費に対するコンテキスト理解

  • ソーシャルメディアアルゴリズムによるニュースソースの偏り、イデオロギーの偏り
  • 意見の異なる人と建設的に議論するためのクリティカルシンキングの重要性

より深く客観的にユーザー行動を理解するためにコンテキスト分析を行いました。ユーザーインタビューのフィードバック、実際の行動様式やどのようなアプリをどこで使用しているかを分析を行い、ユーザー自身が気づいていない問題を見つけることを目的に設定。

コンテキスト分析からユーザーのメディア消費習慣が一つのメディアからの情報収集、自身のイデオロジーや政治スタンスに寄り添ったメディアを好んで使うという点に気がつきました。またアルゴリズムによってタイムラインが自身のアイデオロギーに寄っていることにユーザーは気付いていない、もしくは気にしていない点を私たちチームとしてプロブレムエリアと捉えました。

また、フェイクニュースやニュースに対し複数の見解など、ニュース環境が複雑化していることから、ニュースをより客観的に読み解くクリティカルシンキングの重要性、ディスカッションスキルがより重要になっていると仮定しました。

Define

  • 若年ユーザー層に対し複数課題から具体的なスコープエリアを定義
  • メインユーザーの理解するためペルソナデザイン
  • プロブレムステートメントを作成

ユーザーインタビューとコンテキスト分析の後、現状のニュース消費を変革する必要を定義しました。

  • ニュース記事に対するクリティカルシンキングの向上
  • イデオロギーに極端に依存せず多様な意見を取り入れディスカッションすること

私たちチームとして、ユーザーのメディア消費習慣がソーシャルメディアに偏りすぎていることをプロブレムとして認識しました。また自身のアイデオロジーに偏ったフィルターバブルは異なる意見や視点が見えづらくなり、民主主義的な議論を行う上で、ニュースコンテンツにとっては好ましくないという点で定義しました。

これらをベースにより質の高いニュース消費行動、建設的なディスカッションへとユーザーを変えるというゴールに対し、より具体的なペルソナをデザインしました。若年層ユーザーの中から特にニュース消費が頻繁な層を「ニュースオタク」と定義し、このグループにフォーカスしてデザイン。「ニュースオタク」は、毎日2~3回の頻度で頻繁にニュースにアクセスし、自分の意見を主張するため好みの記事を選び、意見の異なる人とではなく、同じような考えを持った人たちとのみ交流するユーザーグループ。

まずこのペルソナからニュース消費行動を変え、自分のコンフォートゾーン(バブル)から抜け出し、視野を広げてもらうようフォーカス。またBBCが持つ信頼性は、どの報道機関よりも強いレガシーであるので、レガシーを活用してBBCが中立として仲介する形での新しいデジタルニュース文化の構築を考えました。

またプロブレムステートメント作成の際に、公共放送として文化的な変化をもたらすだけでなく、BBCのビジネスを維持する必要があるため、財政面でのBBCに利益をもたらす可能性も含めてエリアを設定しました。

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Design

アイディアセッション BEFORE DURING AFTER エクスペンスジャーニー

  • アイディア- ユーザーエクスペリエンスをBefore, During, After の3つに分けデジタルを軸にしたユーザー体験を可能な限りアイディア出し。
  • バリデーション,プロトタイプを活用しユーザーテスト、ワークショップ にてフィードバックを蓄積

今回のプロジェクトではデジタルサービスをデザインするというゴールがあったので、デジタル上でのユーザーエクスぺリンスにフォーカスした形でアイディア出しを行いました。アイディア出しでは、チーム内で議論し、ユーザー体験をBefore During Afterの3つに分けデザイン。その後、プロトタイプを作成し、ワークショップやインタビューを通じて、フィードバックを蓄積していきました。

特にプロトタイプセッションでは、デザインしたフェイクニュース診断機能に対するポジティブな反応が多く、ユーザーがオンライン情報に対し信頼を寄せる方法を欲しているかがより明確になりました。そしてユーザーの多くが、BBCがサービス提供者としてフェイクニュース対策をすることに対し安心感を感じるという回答をしていました。これらフィードバックを元にプロトタイプの改善、機能やデザインを詰めていきました。

“Fact checking is very useful. It’s very helpful to know the sources of news”

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Delivery

Service Proposition | Business Strategy | Data Analysis

  • ビジネスモデル開発、サービスブループリント設計
  • ステークホルダーマッピング

BBCが提案された企画書で述べられていた点でBBCは世界規模の競争相手に比べ潤沢な予算がある訳でないので、全体のビジネスモデルも予算や規模を考慮した上構築する必要がありました。

まず初めにサービスブループリントを通じ、”誰”が”どうやって”サービスで運営するのか、それに加えマネタイズの方法も検討しました。サービスを設計するにあたり、ユーザーのデジタル体験デザインに留まらず、サービス全体としてどのように実装できるかも検討していきました。またBBCという巨大企業そのものの動かすのは現実的ではなく、提案としてのリスクも考え、MVPとしてスタートするよう全体設計し実現可能性を高める施策もデザインしました。

プロジェクトの最後にBBCデザインチームへのプレゼンテーションを実施、非常に有意義なフィードバックを受け取りました。BBCチームとして今後の実現可能性を議論するという結論をいただきプロジェクト終了。今回の目的は実装ではなく、将来の新しいサービスの可能性を模索するという中で5週間という短い期間ながら有意義なアイディアを出せクライアントの要件をクリアすることができました。

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